子どもの将来に向けた教育資金を準備する方法として、昔から根強い人気を持つのが「学資保険」です。
月々の保険料を積み立てることで、大学入学などのタイミングに合わせてまとまったお金が受け取れることから、子育て家庭にとって一つの安心材料となっています。
しかし近年では、金利の低下や投資信託などの選択肢の多様化により、「本当に学資保険が最適なのか?」と悩む声も増えてきました。
学資保険には確かにメリットもありますが、同時に見落とせないデメリットも存在します。
この記事では、学資保険の特徴を正しく理解し、加入を検討する際に押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。
もくじ
子どもの保険は本当に必要?家庭によって異なる“加入の目的”を整理しよう
子どもの保険と一言でいっても、その目的は家庭によって異なります。
「ケガや病気に備えたい」「将来の教育資金を貯めたい」「万が一の医療費負担が心配」など、加入の背景にはさまざまな理由があります。
まずは、自分たちが何のために子どもの保険に入りたいのかを明確にすることが、無駄なく安心できる保険選びの第一歩です。
子どもの保険には大きく分けて3つのタイプがあります。
- 医療保障型:ケガや病気での入院・通院に備える保険
- 学資保険型:教育資金を貯めるための貯蓄型保険
- 共済型:掛け金が安く、保障がシンプルな共済保険
家庭の家計状況や子どもの健康状態、将来設計に応じて、どの保障が必要なのかをしっかり選ぶことが大切です。
月1,000円台で入れる子ども向け医療保険・共済の特徴
「保険に入りたいけど、家計に余裕がない…」そんな子育て家庭におすすめなのが、掛け金が安く、保障がシンプルでわかりやすい共済保険やネット型保険です。
特に人気があるのが、以下のような共済・ネット保険です。
都道府県民共済「こども型」
- 月額保険料:1,000円(1口)
- 入院1日当たり:6,000円
- 通院保障あり(1日あたり2,000円)
- 手術・死亡保障も含まれるバランス型
全国の都道府県ごとに提供されており、シンプルで加入しやすいのが特徴。
通院も対象になるため、子どものケガや風邪など、頻度の高い事例にも対応しやすい。
CO・OP共済「たすけあいジュニアコース」
- 月額保険料:1,000円
- 入院1日当たり:6,000円
- 通院1日当たり:2,000円(事故・疾病問わず)
- 出産祝金、後遺障害給付などもカバー
生活協同組合が運営する共済で、組合員になれば誰でも加入可能。
割戻金制度もあるため、実質的な掛け金負担が軽くなる場合もあります。
楽天生命「スーパー医療保険(子ども用)」
- 月額保険料:1,300円〜(年齢・性別で変動)
- 入院1日当たり:5,000円(60日型)
- 先進医療保障付き
- ネット申込・保険証券もペーパーレス
ネット完結型で、申し込みが簡単。医療保障をしっかり持たせたい家庭に適しています。
学資保険に頼りすぎない!教育資金を貯めるための考え方
子どもの将来に向けて、学資保険を検討している家庭も多いですが、現在では返戻率が100%を下回るケースもあり、「保険で貯める」より「運用で貯める」時代になりつつあります。
学資保険の主なメリットとデメリット
学資保険は、子どもの将来の教育資金を目的に積み立てていく貯蓄型保険の一種です。
月々の保険料を一定期間支払い、契約満了時に満期金として受け取れる仕組みで、大学入学時など大きな出費に備えられることから、子育て家庭に人気があります。
しかし、メリットばかりではなく、リスクや注意点も存在します。
ここでは、学資保険の長所と短所を正しく理解した上で判断できるよう、それぞれを詳しく解説します。
メリット①:計画的に教育資金を貯められる
最大の利点は、「自動的に積み立てられる仕組み」である点です。
毎月決まった金額を保険料として支払うことで、貯金のような感覚で教育資金を確実に準備できます。
貯金が苦手な家庭でも「強制的に貯まる」環境が整い、支払い満了と同時に数十万円〜数百万円の資金が手元に戻ってくる点が安心材料となります。
メリット②:契約者(親)に万が一のことがあった場合の保険料免除
学資保険の多くには、契約者である親に死亡や高度障害があった場合、以後の保険料が免除される仕組みがあります。
それでも契約は継続され、満期時には予定通りの保険金が支払われます。
つまり、収入を担っていた親に万が一が起きても、教育資金は確保されるという大きな安心感があります。
メリット③:満期金に対して税制上の優遇がある
学資保険の満期金は、「一時所得」として税法上扱われ、受取額が50万円を超える場合にのみ所得として課税対象になります。
しかも50万円の控除があるうえ、課税されるのはその半分の金額に対してです。
たとえば、満期金が70万円だった場合:
- 70万円 − 50万円(控除)= 20万円
- 20万円 ÷ 2 = 10万円が課税対象
このように、税制面でも比較的有利な制度となっています。
デメリット①:途中解約すると元本割れのリスクが高い
学資保険の最大のリスクは、途中で解約すると「払った金額よりも戻りが少ない」=元本割れする可能性が高い点です。
家計が苦しくなったときや、教育方針が変わったときに解約せざるを得ない場合、積み立てた金額の7割〜9割しか戻らないケースもあります。
つまり、柔軟性が非常に低い金融商品と言えるでしょう。
デメリット②:返戻率が低く、実質的な利回りが悪い
現在の学資保険は、低金利時代の影響で返戻率(支払総額に対する受取総額の割合)が100%を切る商品も存在します。
たとえば、月額1万円×18年間=216万円を支払って、戻ってくる金額が210万円といったパターンもあり、これでは預けたお金が目減りすることになります。
利回りを重視するなら、NISAやiDeCoなど投資型の積立手段を検討した方が効率が良いと言えるでしょう。
デメリット③:インフレに弱く、将来の物価上昇に対応できない
学資保険の受取金額は「契約時に決まった額」で固定されているため、将来的に物価や学費が上がった場合、その受取金では不足する可能性があります。
たとえば、契約時には大学の入学金が30万円でも、満期時には50万円になっているようなケースでは、学資保険だけでは足りないという状況も起こりえます。
資産を長期間拘束される以上、インフレ耐性がない点もリスクとして考慮する必要があります。
デメリット④:資金の流動性が低く、使いたいときに使えない
学資保険はあくまでも「満期時にまとまった金額を受け取る」という設計になっており、途中で一部だけ引き出すといった柔軟な使い方ができません。
たとえば、習い事の費用や中学・高校受験時の塾代など、想定外の教育費が発生しても、保険金を前倒しで使うことはできないのです。
突発的な教育費に備えたい家庭には、柔軟に引き出せる積立預金やジュニアNISAの方が向いているかもしれません。
まとめ:学資保険は「安心感」と「固定性」が強み、だが慎重に検討を
学資保険は、堅実に教育資金を積み立てたい方にとっては魅力のある選択肢ですが、元本割れのリスクや運用効率の低さをしっかり理解した上で選ぶべき商品です。
返戻率だけにとらわれず、「万が一のときに保険料が免除される」「教育費を確実に準備したい」など、目的に合った活用法ができるかどうかを冷静に判断しましょう。
必要に応じて、保険+貯蓄・運用の併用でリスク分散するのも効果的な方法です。
必要な保険・不要な保険の見極めが重要
子どもの保険選びでは、「なんとなく不安だから」「周りも入っているから」といった理由で加入してしまうと、保障が過剰になったり、逆に必要な保障が不足したりすることがあります。
以下の視点を持つと、ムダなく効果的な保険選びができます。
- 子どもが健康で医療費も無料なら、医療保障は最低限でよい
- 教育資金は保険よりも運用や貯金の方が柔軟性が高い
- ケガや事故が心配なら、共済で十分カバーできる
特に、自治体によっては中学生まで医療費が実質無料になる制度を提供している地域もあります。
その場合、民間の医療保険をあえて持たなくても、医療費負担は最小限に抑えられます。
保険料は「月いくらまでなら出せるか」から逆算する
子育て家庭の家計は限られています。
保険は「いくら払えるか」から考え、「その金額で何を優先するか」を決めるのが現実的です。
たとえば月1,000円の共済なら医療保障+事故の備えまでカバーできますし、月3,000円出せるならネット医療保険+学資保険という選択肢も出てきます。
迷ったら、「最低限の安心を確保するにはどこまで必要か?」を考え、掛けすぎにならないように調整することが大切です。
保険以外の手段も視野に入れる
「保険に入る=安心」ではなく、「保険でしか備えられないリスクだけをカバーする」という考え方が重要です。
医療費や教育費は、保険以外にも以下の方法で備えることができます。
- 児童手当を学資用に積立
- ジュニアNISAでの積立投資
- 定期預金や財形貯蓄
- 自治体の支援制度や補助金の活用
「備え=保険ありき」ではなく、「制度+貯蓄+保険」の組み合わせで、過不足のない子育て設計ができます。
学資保険は「目的と使い方次第」で価値が決まる
学資保険は、「着実に貯めること」に優れた仕組みであり、特に「貯金が苦手」「決まった時期にまとまった金額を準備したい」という方には非常に適しています。
一方で、途中解約のリスクや利回りの低さ、資金の柔軟性の低さなど、現在の経済状況では見直すべき課題も少なくありません。
重要なのは、「学資保険ありき」で考えるのではなく、家庭の方針や価値観、家計の余裕に応じて、本当に合った方法を選ぶことです。
保険だけでなく、貯蓄や投資など他の選択肢とも比較しながら、後悔のない教育資金計画を立てましょう。
もし迷う場合は、保険の専門家やファイナンシャルプランナーに相談するのもおすすめです。
情報を知り、選択肢を知ることで、子どもと家族の将来に向けたより良い判断ができるようになります。