小学生や中学生の子どもがいるご家庭にとって、修学旅行は大切な思い出づくりの場ですが、経済的な事情から費用の負担が重く感じられることもあります。
特に数万円規模の出費が必要となる中学校の修学旅行は、生活状況によっては支払いが困難になるケースも少なくありません。
実はこのような状況に備えて、国や自治体では「就学援助制度」や「教育支援給付」など、修学旅行費用の一部または全額をカバーしてくれる補助制度が用意されています。
本記事では、修学旅行に使える補助金や助成制度について、小学生・中学生それぞれのケースに分けて詳しく解説します。
もくじ
小学生と中学生の修学旅行費はおおよそいくらほどかかるのか?
修学旅行は、子どもにとって大切な学校行事のひとつですが、保護者にとっては家計を圧迫する出費にもなりかねません。
学校から配布される年間予定や積立計画を見ると、予想より高額で驚く家庭も少なくありません。
ここでは、全国的な傾向をもとに小学生と中学生の修学旅行費用の目安を紹介します。
小学生の修学旅行費用の相場
- 目安:1万5,000円〜3万円程度
- 期間:日帰りまたは1泊2日が一般的
- 行き先例:奈良・京都などの歴史学習、自然体験、地方の文化施設・テーマパークなど
- 主な費用項目:バスなどの交通費、宿泊費、昼食・夕食代、体験学習の参加料など
小学生の場合は日帰りや1泊のプランが多いため、比較的費用は抑えられています。
ただし都市部では観光施設の入場料や交通費が高くなることもあります。
中学生の修学旅行費用の相場
- 目安:4万円〜7万円程度
- 期間:2泊3日〜3泊4日が主流
- 行き先例:東京・大阪・沖縄・北海道・広島など
- 主な費用項目:新幹線や飛行機などの長距離交通費、ホテル代、食事、班別行動費、体験プログラム費など
中学生になると遠方への修学旅行が多く、宿泊数も増えるため費用は一気に高額化します。
飛行機を利用するような地域では7万円以上かかるケースも珍しくありません。
支払い方法と注意点
多くの学校では毎月の積立方式で修学旅行費を計画的に徴収しています。
たとえば月額3,000〜5,000円を1〜2年間積み立てるケースが一般的です。
- 積立が滞った場合は、旅行参加が保留される可能性も
- 生活困窮世帯には、就学援助や教育支援基金による補助が活用できる
- 学校側と事前に相談すれば、分割支払いなど柔軟な対応も可能
就学援助制度(公立小中学校対象)
就学援助制度は、経済的に困難な家庭の子どもが義務教育を受けられるよう支援する制度で、修学旅行費・学用品費・給食費などを一部または全額補助してくれます。
修学旅行の直前に申請しても間に合わないこともあるため、早めの申請が推奨されます。
- 対象:生活保護受給世帯・住民税非課税世帯・ひとり親世帯など(自治体により異なる)
- 補助金額の目安:小学校で1万円〜2万円、中学校で2万円〜5万円程度(実費補助)
- 申請先や注意点:居住地の市区町村教育委員会、毎年度ごとの申請が必要
就学援助制度の修学旅行や宿泊研修費は建て替えが必要?
経済的に厳しい家庭にとって心強い「就学援助制度」ですが、修学旅行や宿泊研修などの大きな出費を伴う学校行事に対して、実際に保護者が費用を“いったん建て替えなければならない”のか?
というのは非常に重要な疑問です。
結論から言えば、自治体によって異なります。
多くの自治体では「一度家庭で立て替え、後から実費が支給される」という方式を取っていますが、地域によっては「学校が直接自治体に請求し、保護者負担が最初から不要」というケースもあります。
- 事前に建て替えが必要な自治体:費用を一時的に支払った後、後日申請・審査を経て振込で返金
- 建て替え不要の自治体:学校側が費用を立て替え、自治体に請求するため、保護者の支払いなし
ただし、いずれの場合でも「就学援助の認定を受けていること」「所定の手続きを済ませていること」が前提となります。
申請していなかったり、提出期限を過ぎていた場合は支給対象外となる可能性もあります。
建て替えが難しい場合の対処法
就学援助制度があっても、実費支給まで数週間〜数か月かかることがあり、家庭で建て替えができない場合には以下の方法が検討可能です。
- 事前に学校や教育委員会へ「建て替えが難しい」と相談し、支払猶予や別途支援策を依頼
- 自治体の社会福祉協議会で緊急小口貸付制度などの相談を受ける
- NPOや地域の教育支援基金による一時的な立て替え・給付制度を活用
事前確認がカギ!早めの相談が重要
就学援助は「学校を通じて」実施されることが多く、学校に申請状況が伝わっていない場合、建て替え対象として扱われてしまうこともあります。
また、自治体ごとに「前払いか後払いか」の制度設計が異なるため、保護者自身が必ず確認しておくことが大切です。
不明な点がある場合は、学校の事務担当、または市区町村の教育委員会(学務課や教育支援課など)に早めに問い合わせておきましょう。
まとめると
就学援助による修学旅行・宿泊研修費の補助はとてもありがたい制度ですが、「建て替えが必要かどうか」は自治体によって運用方法が異なります。
支援を最大限に活用するには、事前の申請・制度の理解・学校との連携がポイントです。
経済的な理由で子どもが行事に参加できないことを防ぐためにも、早めの準備と相談を心がけましょう。
生活福祉資金貸付制度(修学旅行費用向け)
厚生労働省が所管する生活福祉資金貸付制度の中には、教育支援資金という形で修学旅行費用など突発的な教育関連支出をカバーできる貸付制度があります。
無利子・据置期間ありの条件で借りられるため、支払いが難しい家庭の一時的な救済手段になります。
- 対象:低所得世帯、ひとり親家庭など
- 貸付額の目安:必要額の範囲内(修学旅行費・宿泊費など)
- 申請先や注意点:市区町村の社会福祉協議会を通じて申請、原則無利子・据置あり
生活福祉資金貸付制度(修学旅行費用向け)の具体的な貸付条件と注意点
生活福祉資金貸付制度は、生活に困難を抱える世帯を対象に、教育・生活・住宅など幅広い目的に対して無利子または低利で資金を貸し付ける公的制度です。
この制度のうち「教育支援資金」の枠で、修学旅行・宿泊研修費用にも利用できることは、あまり知られていません。
就学援助が利用できなかった場合や、補助までの時間が足りないケースで一時的な費用立て替え手段として活用できます。
貸付対象となる費用の範囲
- 修学旅行費・積立金・移動交通費
- 自然体験活動・宿泊研修・合宿等の学校行事関連費用
- 校外学習に伴う教材費・宿泊時の装備費
具体的な貸付条件・内容
- 対象者:低所得世帯、ひとり親世帯、障害者世帯など(住民税非課税等)
- 貸付上限額:子ども1人あたり数万円〜10万円程度(自治体により異なる)
- 貸付利率:無利子(保証人ありの場合)、年1.5%以内(保証人なしの場合)
- 償還期間:おおむね5年以内の分割返済(据置期間あり)
- 連帯保証人:原則1名必要だが、いない場合でも貸付可能(利率が異なる)
注意すべき点
- 貸付は“給付”ではなく返済義務があるため、制度利用後は分割返済が必要
- 申請から実行まで数週間〜1か月程度かかるため、修学旅行直前の相談は間に合わない可能性がある
- 申請には学校の行事予定表や費用見積書などが必要なケースもあり、事前準備が必要
申請先と相談窓口
生活福祉資金の貸付は、市区町村の社会福祉協議会を通じて行われます。
まずはお住まいの地域の社会福祉協議会に相談し、「教育支援資金」や「緊急小口資金」の利用可能性について確認してみましょう。
必要に応じて、学校からの説明文や支払い明細、生活状況を証明する書類などの提出が求められます。
相談は無料で、専門の担当者が丁寧に対応してくれます。
まとめると
就学援助制度だけでは対応が難しい場合や、補助の支給までに時間がかかる場合でも、生活福祉資金貸付制度を活用することで修学旅行費用を無理なく準備することが可能です。
家計に負担をかけずに子どもの学びと体験を支えるために、こうした制度を早めに活用していきましょう。
教育支援基金(地域・NPOによる支援)
一部地域では、NPO法人や教育支援財団などが、修学旅行費用を援助する独自の奨学金制度を設けています。
公的制度とは別に使える場合もあるため、自治体の教育支援課や学校を通じて情報を確認するのがおすすめです。
- 対象:経済的に困難な家庭(自治体・団体によって異なる)
- 支援額の目安:1万円〜5万円(寄付や基金により変動)
- 申請先や注意点:地域の教育委員会・NPO団体など、募集時期が限られるケースが多い
教育支援基金(地域・NPOによる修学旅行費用の支援)とは?
就学援助制度や公的貸付制度だけでなく、NPOや教育支援団体、地域の基金などが独自に提供する修学旅行費用の支援も存在します。
これらは主に、経済的理由で修学旅行への参加が困難な子どもたちに向けて、給付型(返済不要)の奨学金や助成金として提供されるのが特徴です。
全国一律ではなく、地域・団体ごとに運営されているため、情報が埋もれがちですが、申請が通れば大きな助けになる支援策です。
支援を行う主な団体・基金の例
- あしなが育英会、キッズドア基金、こども宅食応援団などのNPO法人
- 社会福祉協議会や教育委員会が連携する地域限定の教育支援基金
- 企業・個人寄付による民間財団型奨学金(例:〇〇教育振興基金など)
制度の主な内容と条件
- 対象世帯:住民税非課税世帯、ひとり親家庭、多子世帯、生活保護受給世帯など
- 支援額:5,000円〜50,000円程度(修学旅行費・宿泊研修費の全額または一部)
- 申請形式:学校・福祉機関を通じて申請する「推薦型」が多い
- 申請時期:年1〜2回程度の募集が多く、修学旅行前の時期に合わせた応募が必要
- 選考方法:書類審査と学校推薦、生活状況の申告書など
他制度との併用は可能?
多くの基金では、就学援助や貸付制度との併用も可能です。
ただし、重複して同じ費用を二重に申請することはできません。
たとえば「就学援助で積立金は賄い、支給が間に合わない分を教育支援基金で補う」といった形での活用が有効です。
探し方と申し込みの流れ
- 学校の担任や事務室、スクールソーシャルワーカーに相談
- 市区町村の福祉課・子ども課・教育委員会に問い合わせ
- 地域NPOや社会福祉法人のWebサイトや広報紙をチェック
申請には、世帯収入証明書、学校からの推薦書、申請理由文などが必要な場合があります。
締切が短い場合も多いため、「修学旅行の費用が厳しそう」と感じた時点で早めに相談することが大切です。
まとめると
就学援助や貸付制度に加えて、地域の教育支援基金やNPOの助成金も、経済的な事情を抱える家庭にとって心強い選択肢となります。
公的制度の対象外になってしまった場合や、補助が間に合わない場合でも、こうした仕組みを活用することで、子どもが修学旅行をあきらめずに済む可能性が広がります。
家庭だけで抱え込まず、学校や地域にある支援ネットワークをぜひ活用してください。
修学旅行をあきらめないために!支援制度を活用しよう
経済的な理由で子どもが修学旅行をあきらめる必要はありません。
就学援助制度をはじめ、福祉貸付やNPOの支援など、複数の制度を組み合わせて負担を軽減することができます。
修学旅行費の補助は“申請しなければ受けられない”という制度が多く、情報を知っているかどうかで大きな差が生まれます。
もし不安がある場合は、学校や市区町村の教育委員会、社会福祉協議会などに早めに相談してみましょう。